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ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)の「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌」に対する適応追加と使用上の注意点について

平成31年1月31日

日本婦人科腫瘍学会会員各位

日本婦人科腫瘍学会理事長
青木大輔
婦人科におけるペムブロリズマブの適正使用に関する検討委員会
委員長 万代昌紀

<ペムブロリズマブの適応について>
平成30年12月21日、ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(注:キイトルーダ®、製造販売:MSD株式会社)に関して「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対する適応追加承認が得られました。本適応においては、コンパニオン診断薬である「MSI検査キット(FALCO社)」(参考資料1) を用い、陽性(MSI-High)と判定された患者にのみ使用が可能です。そこで会員のみなさまにおかれましては、添付文書の適応における【効能効果】および【効能効果に関する使用上の注意】を十分確認の上、適切に本剤を使用ください。また適正使用に関するガイドライン(参考資料2,3)も参照ください。

<MSI検査(FALCO社)について>
MSI-High(Microsatellite Instability-High;高頻度マイクロサテライト不安定性)を有する固形癌は、DNAのミスマッチ修復機能に欠損があるため塩基配列のエラーを修復できず、遺伝子変異が蓄積する結果、多くの遺伝子変異を持つ、という特徴があります。このようなMSI-Highを有する固形癌は、婦人科腫瘍のなかでは、子宮体癌だけでなく、頻度は低いものの卵巣癌や子宮頸癌などにおいても報告されています。婦人科領域においても、本検査は「局所進行もしくは転移が認められた標準的な治療が困難な固形癌の薬剤治療方針の選択を目的とする場合」に適応があります。
本検査はリンチ症候群のスクリーニングや補助診断のためにも利用されてきた経緯から、検査実施に際して同意取得をおこなう医療機関もあります。その際には、日本家族性腫瘍学会が作成した「免疫チェックポイント阻害薬適応判定のためのマイクロサテライト不安定性(MSI)検査」(参考資料4)などを用いることを推奨します。本検査で陽性となった場合には、リンチ症候群の可能性があるため、患者の希望により遺伝学的検査による確定診断や適切な遺伝カウンセリングを受けられる体制を整えておく必要があります。遺伝学的検査の実施における主治医の役割に関する考え方については、本会の「卵巣癌患者に対してBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施する際の考え方( 2018年2月22日)」(参考資料5)もご参照ください。

<ペムブロリズマブの免疫学的有害事象について>
本剤は、婦人科腫瘍の標準治療として用いられている化学療法や他の分子標的薬とは異なり、間質性肺疾患、大腸炎、重度の下痢、甲状腺機能障害、下垂体機能障害など、T細胞活性化作用による過度の免疫反応に起因すると考えられる免疫学的有害事象が現れることがあります。本剤を使用される際は、添付文書および「ペムブロリズマブの最適使用推進ガイドライン」(参考資料2)の内容を十分に確認の上、有害事象に適切に対応し、必要に応じて他科への相談を実施する必要があります。

なお、販売後、MSI-High を有する固形癌のうち結腸・直腸癌を除く固形癌を対象とした使用成績調査の実施が予定されています(参考資料3)。各施設におかれましてはご協力をお願いします。

以上の点に留意いただき、会員のみなさまには本剤を実臨床の場で安全かつ適切に使用されますようお願いします。

参考資料

  1. MSI(マイクロサテライト不安定性検査)検査キット(FALCO):
    http://www.falco-hd.co.jp/news/konnpanionn.pdf
  2. ペムブロリズマブ最適使用推進ガイドライン
    ~高頻度マイクロサテラト不安定性(MSI-High)を有する固形癌~:

    https://www.pmda.go.jp/files/000227181.pdf
  3. ペムブロリズマブ適正使用のお願い;MSI-high固形癌(MSD株式会社)
    https://www.jsmo.or.jp/file/dl/newsj/2259.pdf
  4. 日本家族性腫瘍学会
    免疫チェックポイント阻害薬適応判定のためのマイクロサテライト不安定性(MSI)検査:

    http://jsft.umin.jp/project/data/msi_agreement.html
  5. 卵巣癌患者に対してBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施する際の考え方
    https://jsgo.or.jp/opinion/02.html

婦人科におけるペムブロリズマブの適正使用に関する検討委員会
委員長 万代昌紀
委 員 青木大輔 岩田卓 濵西潤三

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