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卵巣癌患者に対してコンパニオン診断としてBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施する際の考え方

日本婦人科腫瘍学会理事長 青木大輔
がんゲノム医療、HBOC診療の適正化に関するワーキンググループ
委員長 青木大輔

はじめに

卵巣癌,卵管癌,原発性腹膜癌(以下、卵巣癌と総称する)の10~15% は遺伝性腫瘍である遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome ; HBOC)に分類される。HBOCは生殖細胞系列のBRCA1あるいはBRCA2遺伝子(BRCA)の病的バリアント(変異)*1を原因とする常染色体優性の遺伝性疾患であり、BRCA遺伝学的検査(遺伝子診断)により確定診断が行われる。

ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬は生殖細胞系列のBRCAに病的バリアントを有する卵巣癌に対する治療薬として米国、欧州では2014年に臨床導入された*2
最初に欧米で承認されたオラパリブはBRCAに病的バリアントを有するプラチナ感受性再発がその適応であったが、すべてのプラチナ感受性再発卵巣癌を対象とした第II相ランダム化比較試験の長期治療継続および安全性のデータが発表されるとともに、その後に承認されたPARP阻害薬(ルカパリブ, ニラパリブ)は、第III相ランダム化比較試験にてBRCAの病的バリアントを有さない症例でも、病的バリアントを有する症例より効果は劣るもののプラセボに対して優位性が認められたことから、現在ではオラパリブも含め、BRCA病的バリアントの有無にかかわらずプラチナ感受性再発に対して経口維持療法としての適応が認められている。わが国においては、PARP阻害薬の1つであるオラパリブ(リムパーザ錠®)がプラチナ感受性再発に対する維持療法として2018年1月に承認された*2

また、2018年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において、生殖細胞系列のBRCAに病的バリアントを有するStage III/IVの卵巣癌を対象とした第III相ランダム化比較試験(SOLO1試験)で、オラパリブを初回化学療法後の維持療法として投与した場合に、プラセボと比較して、有意なPFSの延長が認められたことが発表され、その後に誌上発表された(N Engl J Med 2018; 379:2495-2505)。この結果からわが国では2019年6月に、BRCA遺伝子病的バリアント陽性の卵巣癌患者に対して初回化学療法後の維持療法としてオラパリブが使用可能となった。それに伴い、オラパリブの適応を判断するコンパニオン診断として BRCA遺伝学的検査が実施されている。BRCA遺伝学的検査の結果は当該患者のみならず、その血縁者に対しても、がん予防の観点から利活用可能な情報となりうる。また遺伝情報であることよりその心理社会的な影響などに配慮して実施する必要がある。

さらに2019年9月に卵巣癌の腫瘍組織を対象とした遺伝子検査が、初回化学療法後のオラパリブ維持療法のコンパニオン診断として保険収載された。したがって、体細胞病的バリアント陽性者に対しての対応や生殖細胞系列病的バリアントとの違いを理解しておく必要がある。この点については、VI. 腫瘍組織における遺伝子検査(コンパニオン診断、がんゲノムプロファイル)について、で後述する。

そこで、卵巣癌の診療現場において、特に保険診療としておこなうコンパニオン診断としてのBRCA遺伝子検査の実施に際して「卵巣癌患者に対してコンパニオン診断としてBRCA1あるいはBRCA2の遺伝学的検査を実施する際の考え方」を取りまとめた。会員諸氏におかれては,オラパリブ維持療法の可否を決定するためにBRCA遺伝子検査を実施する場合には、ここに示す要件を十分に勘案されたい。

なお相同組換え修復欠損(homologous recombination deficiency:HRD)を有する卵巣癌におけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法としてオラパリブを考慮する場合、または3つ以上の化学療法歴のあるプラチナ製剤感受性の再発卵巣癌の治療薬としてニラパリブを考慮する場合には、その適応を判断するため、コンパニオン診断としてHRD検査が必要となる。HRD検査を実施する際には、「卵巣癌患者に対してコンパニオン診断として相同組換え修復欠損(homologous recombination deficiency:HRD)の検査を実施する際の考え方」(https://jsgo.or.jp/opinion/06.html)の内容を勘案されたい。

Ⅰ. BRCA遺伝学的検査の実施における主治医の役割

  1. BRCA遺伝学的検査の実施は,主治医が患者に対してその検査の意義や限界について十分な説明を行う。
  2. ② 卵巣癌の治療に従事しBRCA遺伝学的検査を実施する可能性のある医師は、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群診療の手引き」等を熟読し、各種関連学会や関連団体の主催するセミナーや講演会などに参加することが望まれる。

解説
BRCA遺伝学的検査で病的バリアントが認められれば、血縁者が病的バリアント保持者である可能性を示すことになる。遺伝学的検査・診断の意義について十分な説明を行うには、卵巣癌の診断・治療に関する専門的な知識に加えて、遺伝学的な知識が必要であり、検査が血縁者に与える影響の大きさを十分に理解する必要がある。
既発症者に対する遺伝学的検査の事前の説明と同意・了解の確認を誰が行うかについては,日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2011年)」では以下のように述べられている。

3-1)すでに発症している患者の診断を目的として行われる遺伝学的検査

すでに発症している患者を対象とした遺伝学的検査は、主に、臨床的に可能性が高いと考えられる疾患の確定診断や、検討すべき疾患の鑑別診断を目的として行われる。遺伝学的検査は、その分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性などを確認した上で、臨床的および遺伝医学的に有用と考えられる場合に実施する。複数の遺伝学的検査が必要となる場合は、検査の範囲や順番について、臨床的に適切に判断した上で実施する。検査実施に際しては、検査前の適切な時期にその意義や目的の説明を行うことに加えて、結果が得られた後の状況、および検査結果が血縁者に影響を与える可能性があること等についても説明し、被検者がそれらを十分に理解した上で検査を受けるか受けないかについて本人が自律的に意思決定できるように支援する必要がある。十分な説明と支援の後には、書面による同意を得ることが推奨される。これら遺伝学的検査の事前の説明と同意・了解(成人におけるインフォームド・コンセント、未成年者等におけるインフォームド・アセント)の確認は、原則として主治医が行う。また、必要に応じて専門家による遺伝カウンセリングや意思決定のための支援を受けられるように配慮する。

また、医師の教育に関して、同ガイドラインには下記のように記載されている。

遺伝学的検査・診断を実施する際には,実施する各診療科の医師自身が遺伝に関する十分な理解と知識および経験を持つことが重要である。遺伝学的検査・診断に関する情報は常に更新されていることから,遺伝学的検査・診断に関わる医師は最新の研究成果を診療に生かすため積極的に新たな情報を得るよう自己研鑽に努める必要がある。

本検査は卵巣癌の治療法決定に影響する検査であることから、やはり卵巣癌患者を担当する主治医が遺伝学的検査の事前の説明と同意・了解の確認を行うことが適切と考えられる。このことは、厚生労働省科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業(がん政策研究事業)「わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究」研究班(研究代表者:新井正美)により作成された、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群診療の手引き」2017年版*3にも明記されている。
遺伝学的検査は十分な知識と配慮のもとに行なうべき検査である。卵巣癌の治療に従事しBRCA遺伝学的検査を実施する可能性のある医師は、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群診療の手引き」等を熟読し、各種関連学会や関連団体の主催するセミナーや講演会など*4に参加することが望まれる。

Ⅱ. コンパニオン診断としてのBRCA遺伝学的検査を実施する施設基準について

PARP阻害薬のコンパニオン診断としてのBRCA遺伝学的検査の実施は以下の要件を満たすものとする。

  1. ① 卵巣癌患者のBRCA遺伝子バリアントの検査は、婦人科腫瘍専門医、がん薬物療法専門医、または十分な卵巣癌の薬物療法の経験を有する産婦人科医が所属する施設で行う。
  2. BRCA陽性患者ならびにその家族の遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー等が所属する施設で行う。
  3. ③ ①②を同時に満たすことが望ましいが、満たさない場合には、遺伝カウンセリング体制の国内状況を考慮して、①の施設は ②の施設との連携のもとで検査を実施することを可とする。

解説
前述のとおり、本検査は卵巣癌の治療法決定に影響する検査であることから、やはり卵巣癌患者を担当する主治医が遺伝学的検査の事前の説明と同意・了解の確認を行うことが適切と考えられる。主治医が、BRCA遺伝子を含む生殖細胞系列病的バリアントの病態を理解するとともに、PARP阻害薬の有効性、安全性を十分理解したうえで実施することが求められる。ただし、BRCA遺伝学的検査の結果は、陽性・陰性にかかわらず、当該患者のみならずその血縁者に対しても、がん予防の観点から重要である事から、遺伝カウンセリングを職能とする資格である臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと連携する体制をあらかじめ構築しておく必要がある。卵巣癌治療を行っている施設のすべてにおいて遺伝カウンセリング体制が整っているわけではないという現状を鑑みて、主治医の所属する施設とは異なる施設で遺伝カウンセリングを実施することを可とする。

Ⅲ.コンパニオン診断としてBRCA遺伝学的検査の対象となる患者及び実施のタイミング

現在、Stage III/IV卵巣癌患者に対して、オラパリブのコンパニオン診断としてのBRCA遺伝学的検査が保険診療として行われている。生殖細胞系列のBRCA遺伝子を対象とした遺伝学的検査のうち、現時点で保険診療として認められているものとしてはBRCA1/2遺伝子検査(BRACAnalysis診断システム)のみが使用可能である。なお2020年4月より卵巣癌に対しては発症年齢や進行期、組織型、家族歴、投薬の有無等にかかわらず全例にBRCA1/2遺伝子検査(BRACAnalysis診断システム)が保険診療として施行可能である。
またStage III/IV卵巣癌患者に対しては、コンパニオン診断として腫瘍組織を用いたHRD検査を先行して行う場合も想定される。検査の種類やそのタイミングについては、薬剤及び患者の状況に応じて判断する必要があると考えられる。

Ⅳ.BRCA遺伝学的検査に関する遺伝についての相談・説明、遺伝カウンセリングの考え方

  1. ① 医療施設の一般外来等で該当患者から主治医に寄せられる遺伝に関する質問への対応は遺伝カウンセリングとはせず、遺伝に関する相談・説明との位置づけにするのが適切と考えられる。
  2. ② 主治医は遺伝の相談・説明を実施するに当たって、各種関連学会の主催するセミナーや講演会などに参加し、臨床遺伝学、遺伝学的検査・診断に関する知識を習得することが望まれる。
  3. ③ 主治医が該当患者に説明する状況において、発症者だけでなく未発症の血縁者を含め心理社会的な支援が必要と判断された場合、発症者やその血縁者が希望した場合、遺伝カウンセリングを考慮する。したがって、主治医は遺伝学的検査・診断を行うに際しては、遺伝カウンセリングがどのようなものか十分に理解しておく必要がある。
  4. BRCA遺伝学的検査を検討する前に、自施設もしくは他施設の臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなど遺伝医療の経験を有する医療従事者と連携する体制を確立しておくことが望まれる。

解説
遺伝カウンセリング*5 を行うにあたって、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2011年)」では、下記のように記載されている。
遺伝カウンセリングは,情報提供だけではなく,患者・被検者等の自律的選択が可能となるような心理的社会的支援が重要であることから,当該疾患の診療経験が豊富な医師と遺伝カウンセリングに習熟した者が協力し,チーム医療として実施することが望ましい。

BRCA遺伝学的検査が普及するにあたり、遺伝カウンセリングが必要となる状況が増えると考えられる。また、遺伝カウンセリングは、患者のみならず血縁者に対しても可能であることを、検査を行う前に主治医から患者に伝えておく。BRCA遺伝学的検査を行う前に、遺伝カウンセリングが必要になった場合なども想定し、遺伝カウンセリングを職能とする資格である臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー*6 と連携する体制をあらかじめ構築しておく必要がある。
なお、病的バリアント保持者の可能性のある未発症者に対する対応については、日本産科婦人科学会雑誌に「BRCA1またはBRCA2遺伝子変異保持者に対するリスク低減卵管卵巣摘出術(Risk Reducing Salpingo-Oophorectomy: RRSO)に関する考え方」*7 が掲載されているので参照されたい。

Ⅴ.個人情報および個人遺伝情報の取扱い

  1. ① 遺伝学的検査・診断情報は,原則として医療者が共有する情報として診療録に記載し,最大限の配慮と守秘義務の順守により適切に取扱うことが必要である。

解説
遺伝学的検査・診断に関わる遺伝情報の取り扱いについて、日本医学会の「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン(2011年)」では下記のように記載されている。

遺伝情報にアクセスする医療関係者は,遺伝情報の特性を十分理解し,個人の遺伝情報を適切に扱うことが求められる。すでに発症している患者の診断を目的として行われた遺伝学的検査の結果は,原則として,他の臨床検査の結果と同様に,患者の診療に関係する医療者が共有する情報として診療録に記載する必要がある。

遺伝情報は最も取り扱いに注意すべき個人情報である。医療者が共有する情報として診療録に記載するが、最大限の配慮と守秘義務の順守により適切に取扱うことが必要である。

Ⅵ.腫瘍組織における遺伝子検査(コンパニオン診断、がんゲノムプロファイル)について

卵巣癌患者においてPARP阻害薬は、腫瘍組織のBRCA病的バリアント(tBRCA)が陽性であれば、生殖細胞系列由来(germline: gBRCA)か体細胞由来(somatic: sBRCA)かによらず、その効果が期待される。本邦における卵巣癌III, IV期の生殖細胞系列BRCA(gBRCA)病的バリアント陽性率は24.1%と報告されている。一方、体細胞BRCA(sBRCA)病的バリアント陽性率(gBRCAを含まない)は5~7%前後と報告されている。すなわち、卵巣癌III, IV期の腫瘍組織におけるBRCA病的バリアント(tBRCA)陽性率(gBRCA, sBRCA双方を含む)は全体で約30%と見込まれる。卵巣癌における初回化学療法後のオラパリブ維持療法のコンパニオン診断として、腫瘍組織を対象としたFoundationOne® CDxがんゲノムプロファイルが2019年9月25日に薬事承認されており、理論上はsBRCA病的バリアント陽性患者にもオラパリブ維持療法が可能である。しかしながら、FoundationOne® CDxがんゲノムプロファイルは、通常標準治療終了後(もしくは終了見込み)の患者に行われており、初回治療中にコンパニオン診断としてのみ本検査を行うことは現段階では困難をともなう(エキスパートパネル対象外となり、プロファイル検査判断・説明料の4万8000点は算定されない)。なお、保険診療としてがんゲノムプロファイル検査(OncoGuideTM NCCオンコパネル システムを含む)を行えるのは、厚生労働省の指定を受けたがんゲノム医療中核拠点病院、拠点病院、連携病院に限られることにも留意が必要である。BRCA1/2遺伝子検査(BRACAnalysis診断システム:gBRCA病的バリアントの評価)によるコンパニオン診断を受けた卵巣癌患者において、gBRCA病的バリアントが陰性で、将来的にがんゲノムプロファイル検査によりsBRCA病的バリアントが明らかとなる場合があることより、生殖細胞系列病的バリアントと体細胞病的バリアントとを区別して説明しておくことが必要である。なお、卵巣癌症例でFoundationOne® CDxがんゲノムプロファイルにおいてtBRCA病的バリアントが認められたときには、gBRCA病的バリアント陽性の可能性が高い。またtBRCA陽性でもgBRCA陰性であることも報告されており、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝学的検査は腫瘍組織を用いたBRCA遺伝子検査とは別に考えて施行すべきである。遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を適切に提供できるようにしておく必要がある。その場合の対応については、日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム創薬基盤推進研究事業 A‐②:ゲノム情報患者還元課題―患者やその家族等に対して必要とされる説明事項や留意事項を明確化する課題「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」(研究代表者:京都大学 小杉眞司)で作成された 「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言―その1:がん遺伝子パネル検査を中心に(改定第2版)」*8が掲載されているので参照されたい。

おわりに

癌薬物療法では標準治療と呼ばれる薬剤の選択と使い方はあっても,その効果は個人差が大きい。一方、いくつかの癌分子標的薬ではコンパニオン診断*9 の結果に基づいて薬剤が選択される。BRCAの病的バリアントがバイオマーカーとしての意義を有するPARP阻害薬も個別化医療の一躍を担うものと考えることができる。婦人科腫瘍領域では今後も癌細胞あるいは生殖細胞系列の各種DNA解析が臨床応用されると考えられるので、現時点から臨床遺伝学についても精通しておく必要がある。



*1 最近では、「変異(mutation)」の代わりに「バリアント(variant))が使われるようになってきており、ここでは「バリアント」に統一した記載とした。ただし「バリアント」には遺伝子多型やVUSも含まれるため、「変異」を意味する場合には「病的バリアント」と表記する必要がある。

*2 PARP阻害薬の1つであるオラパリブについては、2014年12月に欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)により相次いで承認されている。現在わが国においてもプラチナ感受性再発卵巣癌を対象とした治験が終了し、2018年1月に承認された。その後BRCA病的バリアント陽性、およびtBRCA病的バリアント陽性の卵巣癌患者に対して、初回化学療法後の維持療法として適応拡大がされている。また2020年12月に相同組換え修復欠損を有する卵巣癌におけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法として承認された。
ニラパリブ(ゼジューラ®カプセル)は、2020年9月に卵巣癌における初回化学療法後の維持療法、プラチナ製剤感受性の再発卵巣癌における化学療法後の維持療法、プラチナ製剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌の治療薬として本邦で承認された。

*3「遺伝性乳癌卵巣癌症候群診療の手引き」2017年版 金原出版 (2017年10月刊行)

*4 現在、HBOC等に関するセミナーや講演会などは、以下の各種関連学会や関連団体が主催している。

<関連学会・団体>
日本婦人科腫瘍学会 https://www.jsgo.or.jp/
日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/
日本産科婦人科遺伝診療学会 http://jsgog.kenkyuukai.jp/
日本人類遺伝学会 http://jshg.jp/
日本遺伝カウンセリング学会 http://www.jsgc.jp/
日本遺伝性腫瘍学会 http://jsft.umin.jp/
日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 http://johboc.jp/
日本臨床腫瘍学会 http://www.jsmo.or.jp/

*5 遺伝カウンセリングの定義
遺伝カウンセリングは、疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理学的影響、および家族への影響を、人々が理解し適応していくことを助けるプロセスである。このプロセスには、次項が含まれる。

  • 疾患の発生および再発の可能性を評価するための家族歴および病歴の解釈
  • 遺伝現象、検査、マネージメント、予防、資源、および研究についての教育
  • インフォームド・チョイス(十分な情報を得た上での自律的選択)、およびリスクや状況への適応を促進するためのカウンセリング
    (米国遺伝カウンセラー学会 2005)

*6 臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー
臨床遺伝専門医は適切な遺伝医療の実行と遺伝子に関係した問題の解決等を担う専門医である。日本人類遺伝学会あるいは日本遺伝カウンセリング学会が認定・更新を行う。
http://www.jbmg.jp
認定遺伝カウンセラーは遺伝医療を必要としている患者や家族に適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポ-トを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職である。認定遺伝カウンセラーは日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が協力して制度化をしている。基盤の職種としては看護師、保健師、助産師などのメディカルスタッフや、臨床心理士、社会福祉士、薬剤師、 栄養士、臨床検査技師など、また生物学・生化学などの遺伝医学研究者やその他の人文・社会福祉系などの専門職が考えられている。大学院修士課程で養成がなされている。
http://plaza.umin.ac.jp/~GC/

*7 日産婦誌 2016;68(6), 1332-1334

*8 「ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言―その1:がん遺伝子パネル検査を中心に(改定第2版)」 日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム創薬基盤推進研究事業 A‐② https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20200121.html

*9 コンパニオン診断とは、医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために臨床検査を実施すること。その際用いられる体外診断用医薬品(in vitro diagnostic; IVD)をコンパニオン診断薬(companion diagnostics; CoDxもしくはCDx)と称する。多くは医薬品の有効性や安全性を一層高めるために、その使用対象患者に該当するかどうかなどをあらかじめ検査する目的で使用される。
平成 25 年 7 月 1 日に厚生労働省医薬食品局審査管理課長より発出された「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について」によれば、コンパニオン診断薬等とは、特定の医薬品の有効性又は安全性の向上等の目的で使用する次のいずれかに該当するものであって、当該医薬品の使用に不可欠な体外診断用医薬品又は医療機器(単に疾病の診断等を目的とする体 外診断用医薬品又は医療機器を除く。)であること。
(1)特定の医薬品の効果がより期待される患者を特定するための体外診断用医薬品又は医療機器(2)特定の医薬品による特定の副作用について、それが発現するおそれの高い患者を特定するための体外診断用医薬品又は医療機器(3)特定の医薬品の用法・用量の最適化又は投与中止の判断を適切に実施するために必要な体外診断用医薬品又は医療機器、と記載されている。原則として、当該医薬品の承認申請を行う際は、同時期に当該コンパニオン診断薬等の承認申請が行われるべきであること、とされている。

がんゲノム医療、HBOC診療の適正化に関するワーキンググループ
委員長 青木大輔

委員 榎本隆之 岡本愛光 織田克利 竹原和宏 津田 均 永瀬 智
平沢 晃 万代昌紀 三上幹男 八重樫伸生 渡部 洋

2020年3月14日理事会にて承認
2021年3月26日理事会承認により改訂

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