婦人科悪性腫瘍センチネルリンパ節ナビゲーション手術の手引きVer3.1
⽇本婦⼈科腫瘍学会センチネルリンパ節普及WG
センチネルリンパ節(SLN)とは、原発巣からリンパ節転移を⽣じる際に、最初に転移の起こるリンパ節を指す。SLNに転移がなければ、他のリンパ節転移を⽣じ得ないというのがセンチネル理論であり、婦⼈科悪性腫瘍のうち、⼦宮頸がん、⼦宮体がん、外陰がんはセンチネル理論が成り⽴つとされている。SLNを同定するためには、トレーサーといわれる薬剤を腫瘍近傍ないしは原発臓器に局注し、適切な時間経過ののちに、トレーサーの集積を検出する必要がある。トレーサーはラジオアイソトープで標識したRIトレーサー、⾊素を⽤いた⾊素トレーサー、蛍光⾊素を⽤いた蛍光⾊素トレーサーに⼤別され、それぞれを単独ないしは併⽤して、SLNの同定に⽤いる。
同定されたSLNを⽣検し、病理診断に供する。その結果として、系統的リンパ節郭清の省略を図る⼿術術式をセンチネルリンパ節ナビゲーション⼿術(SNNS)と呼ぶが、安全かつ有効なSNNSの実施には、正確なSLNの同定と、病理診断(ないしは分⼦⽣物学的診断)、そして診断結果の解釈が必要である。上記が担保されないと、不適切なリンパ節郭清の省略や、過剰なリンパ節⽣検にもつながるため、患者にとって不利益となる。各施設において婦⼈科悪性腫瘍のセンチネルリンパ節ナビゲーション⼿術を開始するにあたって、病理診断の担当者もその⽅法と意義を理解しておく必要がある。なお、SNNSの他に、SLNの同定、⽣検を⾏ったうえで、転移の有無にかかわらず通常どおりの系統的リンパ節郭清を⾏い、リンパ節転移の診断精度向上を狙うSLNマッピング⼿術を⾏うという考え⽅もある。
本⼿引きでは、実臨床におけるSLN⽣検/SNNSの考え⽅を⽰した。 SLN⽣検の実施に当たっては本「⼿引き」および「FAQ」を参考にされたい。本⼿引きが安全かつ有効なSNNSの実施の参考になると幸いである。
本⼿引きの内容
1.総論:婦⼈科悪性腫瘍の共通事項
1)婦⼈科悪性腫瘍におけるセンチネルリンパ節⽣検の現状(2026年4⽉現在)
婦⼈科悪性腫瘍においては、トレーサーの薬事承認は2023年3⽉にテクネ®フチン酸が⼦宮頸がん、⼦宮体がん、外陰がんを適応症として保険収載されており、2026年2⽉に蛍光⾊素トレーサーであるインドシアニングリーン(ICG)が⼦宮頸がん、⼦宮体がんを適応症として保険収載された。⼀⽅、⾊素トレーサーであるインジゴカルミンやパテントブルーは依然として保険適⽤外である。
⼀⽅、⼿技料であるセンチネルリンパ節⽣検加算は2024年度診療報酬改訂で、⼥⼦外性器悪性腫瘍⼿術にのみ認められ、2026年度診療報酬改訂で、⼦宮悪性腫瘍⼿術、腹腔鏡下⼦宮悪性腫瘍⼿術においても認められる予定である。施設基準(下記2)を参照)および届出が必要なことを留意されたい。
以上から、現状は以下の表のとおりである。
| RIトレーサー (テクネフチン酸) |
蛍光⾊素トレーサー (ICG) |
SLN ⽣検加算 | |
| ⼦宮頸がん | 〇 | 〇 | 〇* |
| ⼦宮体がん | 〇 | 〇 | 〇* |
| 外陰がん | 〇 | ✕ | 〇* |
〇:保険診療にて実施/投与可✕:保険適⽤外* 施設基準があり、届出が必要
RIトレーサーであるテクネフチン酸のみを⽤いたSLN⽣検/SNNS、は⼦宮頸がん、⼦宮体がん、外陰がんを対象として保険診療にて実施可能であり3,000点を請求可能である。⼀⽅で、蛍光⾊素トレーサーであるICGのみを⽤いたSLN⽣検、またはRIとICGを併⽤したSLN⽣検は⼦宮頸がん、⼦宮体がんを対象として保険診療にて実施可能であり5,000点を請求可能である。いずれも、⼿技料を請求可能なのは施設基準を満たして届出を⾏った施設のみである。
国が定めた施設基準に加えて、⽇本産科婦⼈科学会と⽇本婦⼈科腫瘍学会では適正なSLN⽣検の普及を⽬指し、以下のような指針を定めているため遵守されたい。
2)施設・術者基準について
- (1)外陰がん
⼥⼦外性器悪性腫瘍⼿術のセンチネルリンパ節⽣検加算の国が定める施設基準は、以下の通りである。- ①産婦⼈科⼜は婦⼈科の経験を5年以上有しており、⼥⼦外性器悪性腫瘍⼿術における⼥⼦外性器悪性腫瘍⼿術センチネルリンパ節⽣検を、当該⼿術に習熟した医師の指導の下に、術者として3例以上経験している医師が配置されていること。
- ② 産婦⼈科⼜は婦⼈科及び放射線科を標榜している保険医療機関であり、当該診療科において常勤の医師が配置されていること。
- ③ 病理部⾨が設置され、病理医が配置されていること。
- 加えて、⽇本産科婦⼈科学会および⽇本婦⼈科腫瘍学会としては以下の項⽬を「センチネルリンパ節⽣検実施指針」として定めているので、遵守されたい。
- 1) ⽇本産科婦⼈科学会婦⼈科腫瘍登録の参加施設であり、婦⼈科腫瘍登録を実施していること。
- 2) ⽇本婦⼈科腫瘍学会婦⼈科悪性腫瘍総合⼊⼒システム(JESGO)を導⼊し、SLN⽣検/SNNS 症例登録を⾏うこと。
- 3) ⼥⼦外性器悪性腫瘍⼿術センチネルリンパ節⽣検の執⼑経験のある婦⼈科腫瘍専⾨医が執⼑または⼿術を指導することが望ましい。
- 4) SNNSの実施は、⼗分なバックアップ郭清の経験*1 を有する医師の執⼑、あるいは指導下で⾏うことが望ましい。
- 5) SNNSは短軸2mm スライスの標本を作成し診断できる病理診断体制の下で実施することが望ましい。ただし、OSNA 法等、それに変わる検査法が実施可能な施設においてはその限りではない。
- 6) SLN⽣検の実施にあたっては⽇本婦⼈科腫瘍学会 HP に掲載されている「婦⼈科悪性腫瘍センチネルリンパ節ナビゲーション⼿術の⼿引き」及び「FAQ」を参考にすること。
- *1 ⼗分なバックアップ郭清の⽬安については、FAQ を参照のこと。
- (2)子宮悪性腫瘍
2026年4⽉、⼦宮悪性腫瘍⼿術(K879)および腹腔鏡下⼦宮悪性腫瘍⼿術*(⼦宮頸がん、⼦宮体がん)(K879-2)においてセンチネルリンパ節⽣検加算が認められた。国が定める施設基準は以下の通りである。
*内視鏡⼿術⽤⽀援機器を⽤いる場合も含む- ① 産婦⼈科⼜は婦⼈科の経験を5年以上有しており、⼦宮悪性腫瘍⼿術における⼦宮悪性腫瘍センチネルリンパ節⽣検を、当該⼿術に習熟した医師の指導の下に、術者として5症例以上経験している医師が配置されていること。
- ② 当該保険医療機関が産婦⼈科⼜は婦⼈科を標榜しているとともに、放射線科を標榜しており、当該診療科において常勤の医師が2名以上配置されていること。
- ③ ⿇酔科標榜医が配置されていること。
- ④ 病理部⾨が設置され、病理医が配置されていること。
- ⑤ 関係学会の定める指針を遵守していること。
- 1) ⽇本産科婦⼈科学会婦⼈科腫瘍登録の参加施設であり、婦⼈科腫瘍登録を実施していること。
- 2) ⽇本婦⼈科腫瘍学会婦⼈科悪性腫瘍総合⼊⼒システム(JESGO)を導⼊し、SLN⽣検/SNNS症例登録を⾏うこと。
- 3) 5例以上の⼦宮悪性腫瘍⼿術センチネルリンパ節⽣検の執⼑経験のある婦⼈科腫瘍専⾨医が執⼑または指導下に実施することが望ましい。
- 4) SLNナビゲーション⼿術の実施は、⼗分なバックアップ郭清の経験*1 を有する医師の執⼑、あるいは指導下で⾏うことが望ましい。
- 5) 蛍光⾊素法単独によるSLN ⽣検は、ラジオアイソトープ(RI)法単独、あるいはRI+⾊素(蛍光⾊素)の併⽤法に習熟した医師が執⼑または指導下に実施することが望ましい。
- 6) SLN ビゲーション⼿術は短軸2mmスライスの標本を作成し診断できる病理診断体制の下で実施することが望ましい。ただし、OSNA法等、それに変わる検査法が実施可能な施設においてはその限りではない。
- 7) SLN⽣検の実施にあたっては⽇本婦⼈科腫瘍学会 HPに掲載されている「婦⼈科悪性腫瘍センチネルリンパ節ナビゲーション⼿術の⼿引き」及び「FAQ」を参考にすること。
- *1 ⼗分なバックアップ郭清の⽬安については、FAQ を参照のこと。
3)病理診断
推奨すべき病理診断法は術中診断,永久標本での診断にかかわらず,SLNの病理学的検索は通常のHE染⾊を基本とする。SLNに対する標本作製⽅法については,提出されたすべてのSLNを原則短軸⽅向に2mm間隔で細切し,標本を作製する。免疫組織化学は必須ではないが、必要に応じて適⽤する。
転移病巣の⼤きさにより、下記に分類して記録する。
- ・Isolated tumor cells(ITC) 転移病巣径0.2mm以下
- ・微小転移(Micro metastasis) 転移病巣径0.2-2mm
- ・マクロ転移(Macro metastasis) 転移病巣径2mm超
4)分子生物学的診断
分子生物学的手法の一つであるOne-step nucleic acid amplification(OSNA)法は通常の病理組織学的検索の代用となり得る診断法であり、病理医および標本作製に関わる技師の負担軽減に役立つ。
OSNA法による診断を行う場合は、術前のがん組織にてサイトケラチン(CK)19の発現を確認する。原則として、SLNの半割等は行わず、そのままOSNA検体として検査を行う。コピー数により3)に準じた半定量が可能との報告がなされているが、統一された見解はない。
OSNA法は薬事承認されているが、そのがん腫のSLN生検が保険収載されていない場合はOSNA法のコストは保険請求できない。OSNAを行う前のリンパ節における捺印細胞診を行う場合は、細胞診については請求可能である。
5)登録・クオリティコントロールについて
婦人科悪性腫瘍においてSLN生検/SNNSを施行する際には、日本産科婦人科学会婦人科腫瘍登録に症例登録を行うとともに、日本婦人科腫瘍学会婦人科悪性腫瘍総合入力システム(JESGO)を用いて、SLN生検関連項目を⼊⼒する。SLN生検関連項目は以下の通りである。
術者、助手、トレーサー種類、トレーサー投与方法(部位、用量、時間)、同定リンパ節(部位、トレーサー種類)、生検リンパ節(部位)、迅速・永久病理診断結果(転移の有無、ITC、micro、macroの別)、手術内容(郭清省略の有無、系統的郭清範囲)
JESGOに登録された項目は、2026年度以降に日本婦人科腫瘍学会主導の後方視的臨床研究として収集解析を行う予定であり、その際には各施設から一括登録できるようなフォーマットを開発予定である。
2.各論
1)子宮頸がん
-
① 適応
【ナビゲーション⼿術】
進⾏期分類(⽇産婦2020、FIGO2018):術前推定ⅠA1(脈管侵襲陽性)、IA2、IB1、IB2*1、ⅡA1期
組織型:扁平上⽪癌、HPV 関連腺癌、腺扁平上⽪癌に限る
【マッピング⼿術】
進⾏期分類(⽇産婦2020、FIGO2018):ⅠA1(脈管侵襲陽性)、ⅠA2、ⅠB1、ⅠB2*1、ⅡA1 期
組織型:問わない *1 厳密にはSLN ⽣検の適応はⅠA―ⅠB1 期だが、ⅠB2 期のうち外向発育型は適応になる可能性がある事を勘案して上記とした -
② トレーサー投与方法
RI(テクネ®フチン酸キット)もしくはICG(ジアグノグリーン注射用®)あるいはその併用*2 ・RI : フィチン酸テクネチウム(99mTc)注射液として38~111MBqを手術前日または当日に、子宮腟部に適宜分割(通常4か所)して投与する。
NCCN guideline Cervical cancer ver 2024.3より引用
・ICG*2 : インドシアニングリーンとして、25mgを20mLの注射用水で溶解し、1.25mg/mLの溶液として、開腹後(後腹膜腔展開後*3)に、いずれも⼦宮頸部に適宜分割(通常4か所)して投与する。 *2 ICG は2026年2⽉付けで⼦宮頸がん、⼦宮体がんに薬事承認となった。
*3 トレーサー投与前に後腹膜腔の展開を行ってもよいが、その際はリンパ管を傷つけないように行う -
③ SLN同定方法
RIトレーサーは、術前にSPECT-CTまたはリンフォシンチグラフィを撮影し、評価を行う。術中はガンマプローブにより同定を行う。
色素トレーサーは肉眼的に青変するリンパ節を確認、蛍光色素トレーサーは赤外観察カメラシステム等により同定を行う。色素トレーサーや蛍光色素トレーサーは時間経過により、SLNからwash outされてしまい、2nd、3rdのリンパ節に到達してしまうことがあるので、注意が必要である。そのため、色素、蛍光色素トレーサーは、開腹(トロッカー挿入)後、SLNの検索準備が整ったうえで、直前に投与すべきである。
SLNの同定に慣れるまでは、RI法を併用することが望ましい -
④ ナビゲーション手術
トレーサーでSLNが同定され、かつ迅速診断にて転移陰性が確認できた症例を対象とする。腫大リンパ節があればSLNの有無に関わらず摘出する。RI局注部の高集積の影響で、近傍のhot nodeの集積がマスクされるshine through現象により偽陰性の可能性を勘案し、基靭帯節は必ず摘出する。片側のみの同定にとどまった場合、同定されなかった側は系統的リンパ節郭清を行うべきであり、安易な郭清省略はすべきではない。
SLN転移陽性だった場合*4は原則として系統的リンパ節郭清を行う。ただし、施設の方針としてリンパ節郭清を中止してCCRTへ移行することも許容される。
SLNの取り扱いについては、子宮頸癌取扱い規約、子宮頸癌治療ガイドラインも参照されたい。 *4 術中診断で微小転移、ITCと判定された場合、あるいは断定できないが強く微小転移、ITCを疑う場合も系統的リンパ節郭清を考慮する
2)子宮体がん
-
① 適応
【ナビゲーション⼿術】
進⾏期分類(⽇産婦2011、FIGO2008): 術前推定IA 期、IB 期*1、II 期*1
組織型:原則として、類内膜癌G1, G2
【マッピング⼿術】
進⾏期分類(⽇産婦2011、FIGO2008): 術前推定I-II 期相当
組織型:原則として、類内膜癌
特殊組織型(漿液性癌、明細胞癌、粘液性癌、癌⾁腫)も考慮される
*1:ナビゲーション⼿術は再発低リスク群と推定される症例で開始すべきである。
⼿技に熟練した施設ではその限りではないが、傍⼤動脈リンパ節転移のリスクも勘案し慎重に実施を検討すべきである。 -
② トレーサー投与方法
RI(テクネ®フチン酸キット)もしくはICG(ジアグノグリーン注射用®)あるいはその併用*5
・RI : フィチン酸テクネチウム(99mTc)注射液として38~111MBqを、手術前日または当日に、子宮腟部の2ないし4方向、または子宮鏡による子宮内腔への局注を行う。
・ICG*5 : インドシアニングリーンとして、25mgを20mLの注射用水で溶解し、1.25mg/mLの溶液として、開腹後(後腹膜腔展開後)*6に、⼦宮頸部2ないし4方向に局注する。 *5 ICGは2026年2⽉付けで⼦宮頸がん、⼦宮体がんに薬事承認となった。
*6 トレーサー投与前に後腹膜腔の展開を行ってもよいが、その際はリンパ管を傷つけないように行う -
③ SLN同定方法
RIトレーサーは、術前にSPECT-CTまたはリンフォシンチグラフィを撮影し、評価を行う。術中はガンマプローブにより同定を行う。
色素トレーサーは肉眼的に青変するリンパ節を確認、蛍光色素トレーサーは赤外観察カメラシステム等により同定を行う。色素トレーサーや蛍光色素トレーサーは時間経過により、SLNからwash outされてしまい、2nd、3rdのリンパ節に到達してしまうことがあるので、注意が必要である。そのため、色素、蛍光色素トレーサーは、開腹(トロッカー挿入)後、SLNの検索準備が整ったうえで、直前に投与すべきである。
SLNの同定に慣れるまではRI法を併⽤することが望ましい。 -
④ ナビゲーション手術
トレーサーでSLNが同定され、かつ迅速診断にて転移陰性が確認できた症例を対象とする。腫大リンパ節があればSLNの有無に関わらず摘出する。片側のみの同定にとどまった場合、同定されなかった側は系統的リンパ節郭清を行うべきであり、安易な郭清省略はすべきではない。
傍大動脈リンパ節の取扱いについては統一した見解がないが、骨盤リンパ節転移を伴わず傍大動脈リンパ節のみに転移を認める例もいるので、特に高悪性度組織型で、傍大動脈リンパ節領域にSLNを認めない場合のリンパ節郭清省略の可否は個別リスクを勘案し、慎重に検討すべきである。
SLN転移陽性だった場合*7は原則として骨盤・傍大動脈の系統的リンパ節郭清を行う。 SLNの取り扱いについては、子宮体癌取扱い規約、子宮体がん治療ガイドラインも参照されたい。 *7 術中診断で微小転移、ITCと判定された場合、あるいは断定できないが強く微小転移、ITCを疑う場合も系統的リンパ節郭清を考慮する
3)外陰がん
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① 適応
進行期分類(日産婦2022、FIGO2021):IB期以上で腫大リンパ節を認めない
(臨床的T1b~T2)大きさは特に規定しない
組織型:扁平上皮癌、悪性黒色腫、乳房外パジェット病、メルケル細胞癌、腺癌
除外基準:リンパ節転移が推定されるもの -
② トレーサー投与方法
RI法(テクネ®フチン酸キット)もしくはICG法(ジアグノグリーン注射用®)*8もしくは色素法(イソスルファンブルー、インジゴカルミン、パテントブルー)*8あるいはRI法とICG法*8もしくは色素法の併用
・RI法:フィチン酸テクネチウム(99mTc)注射液として18.5~111MBqを、手術前日、あるいは手術2~4時間前に、腫瘍周囲の2時、5時、7時、10時の4か所に皮内注射する。
・ICG法*8 : インドシアニングリーンとして、1.25~5mg/mlを手術直前に上述の部位に局注する。
・色素法*8 : イソスルファンブルー1%、インジゴカルミン(約4mg/ml)、パテントブルー1~2%など約4mlを手術直前に上述の部位に局注する。 *8 ICG、青色素ともに、2026年4月現在、保険適用外である -
③ SLN同定方法
RIトレーサーは、術前(投与後2~8時間後に)にSPECT-CTまたはリンフォシンチグラフィを撮影し、評価を行う。術中はガンマプローブにより同定を行う。鼠径部の切開前に行うことが推奨される。
色素トレーサーは肉眼的に青変するリンパ節を確認、蛍光色素トレーサーは赤外観察カメラシステム等により同定を行う。色素トレーサーや蛍光色素トレーサーは時間経過により、SLNからwash outされてしまうことがあるので、注意が必要である。そのため、色素、蛍光色素トレーサーは、加刀直前、SLNの検索準備が整ったうえで、直前に投与すべきである。
SLNの同定に慣れるまではRI法を併用すると、見逃しが少ない。
なお、現時点においては⾊素トレーサーや蛍光⾊素トレーサーは外陰がんには適応外である。 -
④ ナビゲーション手術
外陰がんの局在とSLN同定の有無による郭清省略の考え方を表1に示す。SLN生検で陰性であれば系統郭清省略を行う。腫瘍の局在により、SLNが同定されなかったときの考え方が異なることに留意が必要である。
SLNに転移がある場合*9は、鼠径リンパ節郭清、放射線照射、化学療法同時併用放射線照射などの追加治療を行う。
片側のSLNに転移のある、側方および正中付近(正中から2cm以下)の外陰腫瘍に対しては、対側の鼠径部にSLNに転移がない場合は片側のみの鼠径リンパ節に対する治療が可能である(表1) *9 術中診断で微小転移、ITCと判定された場合、あるいは断定できないが強く微小転移、ITCを疑う場合も系統的リンパ節郭清を考慮する
表1 外陰がんの局在とSLNの取り扱い
| 外陰腫瘍の局在 | SLNマッピング部位 | 対応法 |
| 正中 | 同定なし | 両側:鼠径リンパ節郭清 |
| 片側のみ同定 | 同定側:SLN生検 対側:鼠径リンパ節郭清 |
|
| 両側同定 | 両側:SLN生検 | |
| 正中付近 (正中から2cm未満) |
同定なし | 両側:鼠径リンパ節郭清 |
| 患側のみ同定 | 患側:SLN生検 対側:鼠径リンパ節郭清 |
|
| 両側同定 | 両側:SLN生検 | |
| 対側のみ同定 | 患側:鼠径リンパ節郭清 対側:SLN生検 |
|
| 側方 (正中から2cm以上外側) |
同定なし | 患側:鼠径リンパ節郭清 |
| 患側のみ同定 | 患側:SLN生検 | |
| 両側同定 | 両側:SLN生検 | |
| 対側のみ同定 | 患側:鼠径リンパ節郭清 対側:SLN生検 |
2024年6月6日Ver1.0
2025年10月24日 Ver2.0
2026 年4月28日Ver3.1