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ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤(キイトルーダ®)とレンバチニブメシル酸塩(レンビマ®)の併用にて「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌」に対する効能・効果追加と使用上の注意点について

令和4年1月11日

日本婦人科腫瘍学会会員各位

日本婦人科腫瘍学会理事長
片渕 秀隆
子宮体癌に対するペムブロリズマブとレンバチニブメシル酸塩の適正使用に関する検討WG
委員長 鈴木 直

<がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌の適応について>
令和3年12月24日に、抗悪性腫瘍剤のヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤(注:キイトルーダ®、製造販売:MSD株式会社)と抗悪性腫瘍剤の腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的マルチキナーゼ阻害剤であるレンバチニブメシル酸塩製剤(注:レンビマ®、製造販売:エーザイ株式会社)の併用にて「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体癌」(以下、本適応)の効能・効果が追加承認されました。
本適応は、両剤併用によるKEYNOTE-775/E7080-309試験の結果に基づいて追加承認を得ています。しかしながら、ヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と選択的マルチキナーゼ阻害剤の併用療法は、他領域に先駆けて本邦で初めて承認され、その副作用に関しては未知の部分が少なくないことから、副作用対策を十分に講じた上で、本治療法の慎重なる施行が求められます。
そこで、会員の皆様におかれましては、上記試験にて報告されている有害事象に関する情報(参考資料1、2)を十分確認の上、両剤を適切に使用ください。また、最適使用推進ガイドライン ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(販売名:キイトルーダ点滴静注 100 mg)~子宮体癌~(厚生労働省)(令和3年12月 厚生労働省)(以下、最適使用推進ガイドライン)(参考資料3)、ならびに両薬剤の電子添文の適応における【効能又は効果】および【効能又は効果に関連する注意】(参考資料4、5)を必ず参照ください。

<KEYNOTE-775/E7080-309試験について>
国際共同第III相試験であるKEYNOTE-775/E7080-309試験は、プラチナ製剤を含む化学療法歴のある切除不能な進行・再発の子宮体癌患者827例(日本人104例を含む)を対象に、キイトルーダ®200 mg 3週間間隔投与とレンビマ®20 mg 1日1回投与の併用療法の有効性及び安全性が、既存の単剤化学療法(ドキソルビシン塩酸塩60mg/m2 3週毎(最大500mg/m2)またはパクリタキセル80mg/m2毎週(3投1休)のどちらか主治医が事前選択)を対照として検討されました。主要評価項目はOS及びPFSとされ、キイトルーダ®およびレンビマ®併用は、化学療法と比較してOS及びPFSを有意に延長することが報告されました。また、この有効性は、組織型やMMRステータス等の患者背景に関わらず確認されています。

<KEYNOTE-775/E7080-309試験の有害事象について>
KEYNOTE-775/E7080-309試験において、高血圧、甲状腺機能低下症、下痢、悪心、食欲減退、疲労、蛋白尿、嘔吐、体重減少、関節痛、手足症候群、甲状腺機能亢進症等の有害事象が認められていることから、使用される際は、両薬剤の適正使用ガイド(参考資料1、2)および「最適使用推進ガイドライン」(参考資料3)、両薬剤の電子添文(参考資料4、5)の内容を十分に確認の上、有害事象に適切に対応し、必要に応じて他科への相談を実施する必要があります。

<キイトルーダ®の免疫学的有害事象について>
本剤は、婦人科腫瘍の標準治療として用いられている従来の化学療法とは異なり、間質性肺疾患、大腸炎、重度の下痢、甲状腺機能障害、下垂体機能障害など、T細胞活性化作用による過度の免疫反応に起因すると考えられる免疫学的有害事象が現れることがあります。本剤を使用される際は、キイトルーダ®適正使用ガイド(参考資料1)、最適使用推進ガイドライン(参考資料3)および電子添文(参考資料4)の内容を十分に確認の上、有害事象に適切に対応し、必要に応じて他科への相談を実施する必要があります。なお、キイトルーダ®は最適使用推進ガイドラインに定める施設基準等に合致する場合に使用可能となります。また、令和3年9月3日までに収集された調査結果に基づく、使用成績調査(結腸・直腸癌以外のMSI-High固形癌)安全性情報中間報告書(参考資料6)をご参照ください。

<レンビマ®の有害事象について>
本剤は、受容体チロシンキナーゼを阻害することで高血圧、肝毒性、蛋白尿、出血、手足症候群、甲状腺機能障害、腎障害などの有害事象が現れることがあります。本剤を使用される際は、レンビマ®適正使用ガイド(参考資料2)および電子添文(参考資料5)の内容を十分に確認の上、有害事象に適切に対応し、必要に応じて他科への相談を実施する必要があります。

また、本適応の効能・効果追加承認後、本適応を対象とした、キイトルーダ®およびレンビマ®併用療法時の安全性等を調査する特定使用成績調査の実施が予定されています。各施設におかれましては製造販売業者から依頼があった際はご協力をお願いします。
以上の点に留意いただき、会員のみなさまには両剤を実臨床の場で安全かつ適切に使用されますようお願いします。

参考資料

  1. キイトルーダ®適正使用ガイド(MSD株式会社):
    https://www.pmda.go.jp/RMP/www/170050/bb2e759c-bd7f-4577-b27c-342a2524de1d/170050_4291435A1029_01_009RMPm.pdf
  2. レンビマ®適正使用ガイド(エーザイ株式会社):
    https://www.pmda.go.jp/RMP/www/170033/3744027a-2e69-402b-b16a-72dd0c97c865/170033_4291039M1020_04_001RMPm.pdf
  3. 最適使用推進ガイドライン ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(販売名:キイトルーダ点滴静注 100 mg)~子宮体癌~(厚生労働省):
    https://www.pmda.go.jp/files/000244177.pdf
  4. キイトルーダ®電子添文(MSD株式会社):
    https://jsgo.or.jp/opinion/pdf/document04.pdf
  5. レンビマ®電子添文(エーザイ株式会社):
    https://jsgo.or.jp/opinion/pdf/document05.pdf
  6. キイトルーダ®使用成績調査(結腸・直腸癌以外のMSI-High固形癌)安全性情報中間報告書(MSD株式会社)
    https://jsgo.or.jp/opinion/pdf/document06.pdf

子宮体癌に対するペムブロリズマブとレンバチニブメシル酸塩の適正使用に関する検討WG
委員長 鈴木直
委員 片渕秀隆 三上幹男 岡本愛光 小林陽一 永瀬智 万代昌紀
島田宗昭 岩田卓 本原剛志 野上侑哉 大原樹

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