公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会 25周年記念事業

第2回 座談会

日本婦人科腫瘍学会の
今後の在り方とは

片渕

もう一つ、三上理事長がとても懸念しておられることがあって、是非先生方にご意見をお伺いしたいことがございます。専門医制度というのを中心にやってきたことによって、この学会はかなり敷居の高い学会になっています。例えば他の日本女性医学会とか日本新生児・周産期学会などに比べて色々な要件が高すぎて、特に女性医師が継続できない状況に陥っている。一所懸命に頑張って資格を取ったとしても、結婚や出産を経て仕事の仕方が変わり、以前のようにバリバリ手術などができなくなり、徐々に女性医師の専門医の占める割合が少なくなる傾向にあります。会員数は約4,300人まで伸びてきていますが、このまま伸びていくかについては心配点です。今回、松江での学会においてもその辺りを議論しようと企画されていますが、この場においても、この学会を今後どうしていくかという点について、お考えを是非教えていただきたいと思います。

安田

確かに医局でも女性は増えていますので、その対応は非常に考えておいた方がいいのではないかと思います。

嘉村

手術というのがあるので、他のサブスペシャルティとは違う感じがしています。キャリア形成とインセンティブの辺り、この辺のところはまだなのかなと感じます。すなわち専門医を取ったらどうなの?というところですよね。三上先生のご心配には共感するところがありますけれど。要するにキャリアアップしていくためにはどうしたらいいかというところですよね。やはりインセンティブは一つだと思います。

片渕

例えば、手術はあまりしない環境になるかもしれないけれど、そこで養ったコルポスコピーを見る力というのはすごく活かされるはずです。今後HPV検診が導入されるとコルポスコピーを担当する人が増えていくかもしれませんが、では一般のクリニックでコルポスコピーがされているかと言えば、なかなかそうではない。そうした時に婦人科腫瘍専門医がコルポスコピストとして活かされるという方法も一つにあると思うのです。この事例のように多様性を持って、専門医を活かせるようにする展開はどうか。吉川先生、いかがですか?

吉川

私はそれで思い出すのは、日本産科婦人科学会で、学会のあり方検討委員会の委員長をやっている時があって、その2代前の委員長の中野先生が言い出したキーワードが“オフィスギネコロジー”でした。周産期、お産をやめた後にどうやっていくのかという提案をきちんとしなければ産婦人科を志す人が減ってしまうのではないか、ということだったのですが、その後、議論は深まらなかったですね。実際は婦人科腫瘍専門医がオフィスギネコロジーとして活躍することが強く求められているし、一方でなかなか活躍できてない現状は確かにあります。と言うのも、周産期とか生殖とかの人の方がクリニックで成功している一方で、婦人科腫瘍医は資格を生かす準備ができていないような気がするのです。引退後に長くやっていくときに、オフィスギネコロジーとして実践するわけですから。私もCINなどのレーザー蒸散をやっています。結局、がん専門の婦人科医の武器が少ない。一般病院よりも大学病院やがんセンターにいる婦人科腫瘍医は要注意です。浸潤癌だけで大活躍しているような先生は老後が危ないと。今後は一生涯医師としてやっていくことを学会が支えるべきですし、その一つの制度が専門医制度であって欲しいと思います。専門医制度で「オフィスギネコロジーをやっている人も、立派な専門医ですよ」と推奨していく流れをつくってもいいと思うんです。

片渕

さっきも話しましたように、コルポスコピーが一つのキーワードになると思います。特に女性の婦人科腫瘍専門医の方たちがそういう領域を担っていくのもいいと思いますし、男女に別なく専門医を活かせる大きな場じゃないかと思います。

吉川

私が理事長の時、社保関係においてはコルポスコピーの値段を上げる、その1点に絞った結果、4割増しになったんです、140点が200点くらいでしたでしょうか。それでもまだ超音波などに比べると安すぎるんです。背景を考えると、以前は初診時に全員コルポスコピーをやるような先生がいたんですね、それで値段が下げられたのではないかと。ですが専門医制度の中でコルポスコピーは大事ですから、その辺りテコ入れしていかなければいけないと思います。

あと女性医師について言えば、50代になる直前にクリニックで働き始めることが多いんです。ただ、そうなった時に腫瘍関係のことがなかなか活かせない。不妊症は多くいますよ、妊婦外来もすごく単価が高いんです。ただ腫瘍の方は一般的にニーズが多いわけではないので、今後はそこを考えていかないと。そういうことができるような学会の内容、オフィスギネコロジーに役に立つような技術を勉強できるような機会も必要なのではないかと思います。今後は女性医師が増えていく、今70、80%と言われていますから。その人たちが50歳前後になった時にどんどんクリニックに行きますよ、その時に腫瘍やっているとダメなんだと伝わったら、私たちの領域には来なくなってしまう。そういう意味でも、婦人科腫瘍医こそクリニックが特にやりやすい、という風にしていくことも務めだと思います。

八重樫先生
八重樫先生

八重樫

八重樫先生
八重樫先生

今まで先生方が話されたことと同じですが、専門医の更新の時のハードルはあまり高くしなくていいんじゃないかなと思います。取得するときはもちろんハードルを高くするのですが、運転免許と同じで、一度取ったら更新はそんなに大変でなくていいのではないかと思います。それから腫瘍の専門医で手術はしなくなった場合も、例えばコルポスコピーをしていただくだけでも大きい意味があるんです。大学病院とかがんセンターとかではどんどん外来患者がたまってきていて、アップアップの状態です。そこで患者さんを逆紹介で受けてくれる施設があったら、すごく良いはずなんですね。紹介先に施設と術前・術後のカンファレンスも一緒にやって、状況もわかっていただいた上で紹介をする、というシステムができたら良いと思います。

吉川

私は今、がん研有明病院の近くのクリニックで働いているのですが、CINの管理や5年以降の浸潤癌の経過観察などの紹介をしてもらっています。今、外注でMRIやCTとかできるので、クリニックで浸潤癌のフォローアップもできるんです。多少でもがん研の先生の応援をしている面もあるのです。大病院では総合入院体制加算獲得のために逆紹介が必須ですが、婦人科と泌尿器科が逆紹介に苦戦しているんです。その点で、婦人科腫瘍医は逆紹介を受けるのに最適だと思うんです。

八重樫

それを専門で受けてくれたら、しかも腫瘍専門医ですから、安心してフォローを分担できると思います。

片渕

これからの人たちにとっても歴史を知っておくことは大事なことですので、こうした座談会で記録が残るというのは、この先にとっても大事なサジェスチョンになったのではないかと思います。長い時間、ありがとうございました。

集合写真
集合写真