腫瘍研究の利益相反に関するJSGO指針

腫瘍研究の利益相反に関するJSGO指針 Q&A

【1】指針策定の目的に関するQ&A

【2】対象者に関するQ&A

【3】対象となる活動に関するQ&A

【4】開示・公開すべき事項に関するQ&A

【5】利益相反状態の回避に関するQ&A

【6】実施方法に関するQ&A


【1】 指針策定の目的に関するQ&A

Q1.
利益相反の管理は本来、研究者が所属する施設で行うものと理解していたが、学会が管理する利益相反とはどんなものですか?(本指針1~3条に関連)
A1.
学会員の多くは所属施設で臨床研究を実施し、得られた成果を学会で発表します。研究の実施と発表という2つのステップのそれぞれにおいて、所属施設だけでなく、学会にも利益相反を開示することが求められると考えて下さい。
所属施設に対しては、当該臨床研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時に利益相反自己申告書を施設長へ提出し、当該施設において利益相反マネージメントを受けることが勧められております(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」)。
一方、日本婦人科腫瘍学会(JSGO)が打ち出した今回の「腫瘍研究の利益相反に関する指針」は、学会として行うすべての事業に関して、これを行う学会関係者の利益相反状態を自己申告によって開示・公開させ、これにより学会関係者の社会的・倫理的立場を守ることを目的としております。
すなわち、JSGOでは、腫瘍研究に関する発表演題、論文については、その題目に関連した利益相反状態を、自己申告により開示することが求められます。また、学会活動に大きな影響力を持つ学会役員、委員長については、より詳細な利益相反状態の開示・公開が求められます。指針の策定・改正を行う倫理委員会や、利益相反問題を管轄する利益相反委員会だけでなくガイドライン委員会、編集委員会、社会保険委員会についても、委員長のみならず、委員全員が詳細な利益相反状態の開示・公開を義務づけられます。

Q2.
本指針と施行細則を守れば、法的責任は回避できますか?
A2.
本指針や、その施行細則は、あくまでも学会の自浄を目的として制定するものであり、この規則等に従ったからと言って、法的責任を問われないものではありません。また、申告内容の真偽、申告外の利益取得、申告書の保管期限経過後に発生した問題、等においても、法的責任を問われる可能性はあります。一般に言えることですが、学会の指針や規則・細則には、その上位にある「法令」の適用を回避させる効力のないことをご承知下さい。

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【2】 対象者に関するQ&A

Q3.
配偶者や一親等の親族、収入・財産を共有するものの利益相反状態まで報告するように定めているが、これらの人が開示・公開を拒んだら、どうしたらいいのですか?(本指針24に関連)
A3.
配偶者などの利益相反状態が、申告者の利益相反状態に強く影響するのは一般に理解されているところです。ベンチャー企業の立ち上げや運営において親族が関わる場合も実際にあります。発表者や論文投稿者までには、配偶者などの利益相反状態の開示を求めません。(癌治は発表者のみ免除)しかし、学会役員などには、これらを含めた開示・公開が求められます。配偶者の利益相反状態を申告していなかったことで、申告者が社会的に制裁を受けるのを避けることが目的です。申告者が自身を守るために必要なことと考え、配偶者などを説得してください。学会は配偶者などに対して、直接には何も言う立場にありません。しかし、配偶者などの利益相反状態が深刻な結果、社会的・法的問題が生じた時に、これらを自己申告されていなかった当該申告者を、学会としては、残念ながら社会の批判から守ることができません。また、学会は当該申告者を指針違反者として扱い、本指針で定められた措置をとらざるを得ません。

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【3】 対象となる活動に関するQ&A

Q4.
学会発表、論文投稿、市民公開講座以外に対象となる学会の事業とはなんですか?
A4.
日本医師会や厚生労働省などへ建議を行うこと、これらからの諮問に答えること、優秀な業績の表彰を行うこと、および、診療ガイドラインの作成などです。これらは学会名で行うことですが、建議書や答申書を作成する、表彰業績の選択をする、あるいは、診療ガイドラインの作成を行うのは、理事や委員個人ですので、これらの人々の利益相反状態の開示・公開が必要となります。

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【4】 開示・公開すべき事項に関するQ&A

Q5.
開示と公開はどう違いますか?
A5.
本指針において、開示は学会事務局、理事、評議員、作業部会委員、会員、学会参加者、学会誌購読者に対して行うものと定義します。公開は学会に関係しない外部の人々や、社会一般の人々に対して明らかにするものと定義します。自己申告された内容のどの範囲を開示として扱い、どこまで公開するかは、対象者および対象事業によって異なります。 学会での発表や学会誌への投稿においては、その自己申告範囲は、当該発表および論文に関連した企業・団体と発表者・投稿者との間の関係に限られます。また、申告行為自体は開示という解釈です。
学会役員などについてはより詳細な利益相反状態の自己申告が要求されます。また、学会役員等については、一親等の親族および収入・財産を共有する者についても利益相反状態を申告することになっております。この自己申告は学会に対して開示されるものでありますが、基本的に公開されることを宣誓した上で提出していただきます。しかし、自己申告された内容を、実際に全て公開することは、個人情報保護法の観点から許されるべきこととは考えておりません。社会的・法的に公開が求められた場合には、利益相反委員会で議論し、理事会が公開するべき範囲を決定して、これを公開することになります。

Q6.
株の保有やその他の報酬は、研究に関連した企業・団体に限らないのですか?(本指針4-(2)、(7)に関連)
A6.
学会発表者や論文投稿者については、当該臨床研究に関連する企業・団体のものに限定されます。学会役員などについては、本学会が行う事業に関連する企業・団体に限定して自己申告していただくことになります。

Q7.
私は製薬会社のを20万円分持っています。また、先日、製薬会社の主催する研究会で講演して7万円の講演料をもらいました。これらを、全て自己申告しなければいけませんか?また、収入がある度に自己申告しなければなりませんか?(本指針4-(2)、(4)に関連)
A7.
具体的な申告の時期と申告方法、限度額は対象活動や対象者により異なり、細則に別に定めております。申告時期については、学会発表時、論文投稿時です。学会役員などは就任時と、その後1年に1回の自己申告が必要です。株は1年間の利益が100万円を超える場合、講演料は1企業につき年間50万円を超える場合などの取り決めが細則に定められております。

Q8.
ある医療器具メーカーから、私の勤める市民病院に奨学寄付金250万円の入金があり、研究担当者名は私になっています。実際には、市民病院全体の研究費として公平に使用しています。このような奨学寄付金も私の利益相反状態として開示・公開すべきでしょうか?(本指針4-(6)に関連)
A8.
奨学寄付金であっても、本指針4の(6)にあたると解釈して、1企業から年間200万円を超える場合は、研究担当者名である先生の利益相反状態として申告して下さい。ただし細則にあるように、学会発表、論文投稿では、奨学寄付金を納入した企業・団体と関係のない演題・論文であれば、開示対象となりません。学会役員などのより詳細な利益相反状態の開示・公開を求められる立場の方は全てが自己申告の対象となります。

Q9.
「研究とは直接関係のない、その他の報酬」を申告するように義務づけられていますが、製薬会社が提供するテレビ番組のクイズで海外旅行が当たっても申告するのですか?(本指針4-(10)に関連)
A9.
クイズや抽選で当たったものは景品であって報酬ではありません。申告が義務づけられているのは「報酬」であり、「報酬」とはなんらかの労力に対する見返りとして支払われるものです。従って、景品は申告対象ではありません。本指針4の(10)に当たる例としては、ある医師が特定の薬をよく処方することから、その薬を販売する企業が謝礼の意味でUSBフラッシュメモリーを医師に渡すことなどが該当します。極端な場合は贈賄行為となり刑事罰の対象であり、本指針で扱うものではありません。本指針4(1)~(6)に該当しないが、利益相反状態となる可能性のあるものを拾い上げるために(7)を設けております。細則に1つの企業・団体から受けた報酬が5万円を超える場合は申告することとしております。

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【5】 利益相反状態の回避に関するQ&A

Q10.
寄付講座の多くは企業の寄付資金によって運営されておりますが、寄付講座の教授や職員に対しても利益相反状態の回避の「全ての対象者が回避すべきこと」を適用するのですか?
A10.
寄付講座は深刻な利益相反状態が生じる危険が高いので、本指針が適応されます。

Q11.
利益相反状態の回避について「当該臨床研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり、かつ当該臨床研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には、当該臨床研究の試験責任医師に就任することは可能とする。」という例外規定を設けることは、本指針の理念を弱めることになりませんか?
A11.
本指針の目指すところは、研究者に利益相反状態があることを否定することではなく、また、利益相反状態が強い研究者に対して臨床研究を抑制することでもありません。社会にとって有意義で、重要な臨床研究を行う研究者ほど、利益相反状態が強くなることも事実です。上記のような例外規定を設けることで、有能な研究者が臨床研究に関わる道を開くことが大切と考えております。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の利益相反ポリシーにも同様の例外規定があります。一方、この例外規定に相当する研究者が試験責任医師に就任するために、第三者による審査が必要であるとの意見もあります。しかしながら、JSGOは、学会で行われる事業について利益相反問題を管理する立場にありますが、個々の施設・研究所で行われる臨床研究を管轄することは権限の範囲を越えております。本指針では学会の管轄外で行われる問題については、学会としての判断を示すにとどめております。

Q12.
「がん臨床研究の試験責任者が回避すべきこと」によると特許料・特許権の獲得を回避するべき、とあります。しかし、プロトコールに含まれないが極めて有益な成果(企業の権利外の成果)が得られた場合や、医師が自主的に実施する臨床研究において知的財産権が生じた場合も、これらを放棄しなければならないのですか?
A12.
企業の権利外の成果であれ、知的財産権であれ、これらを得ることと、試験責任者の立場で公正に当該臨床研究を監督することとは両立しがたいものと理解されます。試験責任者を辞任されることで、これらの権利を放棄することは避けられます。

Q13.
私は、10病院が参加する臨床研究の中で協力する私立病院の産婦人科部長で、この臨床研究で私の病院における責任医師になってもらいたいと言われています。しかし、私はこの臨床研究で使う薬を製造販売する会社の理事でもあり、年に600万円の報酬をもらっています。私は、この臨床研究で、私の病院の責任医師にはなってはいけませんか?
A13.
多施設臨床研究における各施設の責任医師は、本指針5には該当しないので、この産婦人科部長が当該施設における責任医師になることを否定するものではありません。但し、当該施設の利益相反委員会や倫理委員会等が、この産婦人科部長について、本臨床試験の責任医師となることが適当ではないと判断されるなら、その決定が優先されると、われわれは考えております。

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【6】 実施方法に関するQ&A

Q14.
JSGOでヌードマウスを使った癌治療薬に関する演題を発表したいのですが、今回の指針に従って、利益相反状態を開示しなければいけませんか?
A14.
今回の指針改定(2017年5月1日)により、腫瘍の臨床研究のみならず、基礎医学研究についても利益相反状態を開示していただくことになりました。

Q15.
JSGO以外の学会で発表するときも、同じような利益相反状態の開示が必要でしょうか?
A15.
他学会での発表での利益相反状態の開示については、それぞれの学会で定められることで、本指針が関与するところではありません。
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