市民の皆さまへ

HPVワクチンについて

はじめに

子宮頸がんは、一般には性交渉によるヒト・パピローマウイルス(HPV)の感染が原因となって形成される前がん病変(CIN)を経て発生します。HPVワクチンは子宮頸がんの発生を、その原因となるHPVの感染を予防することで防ごうというものです。日本で今まで承認されていたのは、2つの型(16・18型)の感染を予防する2価ワクチン(サーバリックス®)と4つの型(6・11・16・18型)の感染を予防する4価ワクチン(ガーダシル®)で、子宮頸がんの約6割を占める16・18型のHPV感染を予防することができました。2020年5月には日本でも9価ワクチン(ガーダシル9®)が承認され、このワクチンは9つの型(6、11、16、18、31、33、45、52、58型)の感染を予防し、子宮頸がんの原因になる約9割のHPV感染を予防できるとされています。

日本における接種状況

日本においては、2010年度の終わりに公費助成(13歳~16歳)が開始され、接種率は約7割という高いものでした。2013年4月からは定期接種(12歳~16歳)となったにも関わらず、HPVワクチン接種後の女子における「多様な症状」が繰り返し報道され、同年6月には厚生労働省により積極的勧奨の差し控えが発表されました。この差し控えは現在も継続されており、接種率は1%にも満たない状況が続いています。

有効性

HPVワクチンによるHPV感染(上記の型)の予防効果は極めて高く、特に初交前に接種した場合には感染をほぼ100%予防することができます。HPVワクチン導入の早かった国においてはHPV感染やCIN、さらには子宮頸がん等のHPV関連がん(HPV感染が原因で発生するがん)の予防効果も示されています。日本においてもHPVワクチン接種によるHPV感染やCINの減少がすでに報告されています。接種率の高い国ではHPV感染が著明に減少し、ワクチンを接種していない人においても、性交渉によってHPVに感染する可能性が減少してHPV感染率が減少するという集団免疫効果も示されています。

安全性

海外ではHPVワクチンの安全性は広く認知されています。本邦においても、厚生労働省の祖父江班による全国疫学調査で、「多様な症状」がHPVワクチンを接種していない者においても認められることが示され、また名古屋市で行われた調査においては、「多様な症状」の頻度がHPVワクチン接種者と非接種者において有意な差が認められないことが報告されました。これらのことから、HPVワクチン接種と「多様な症状」の因果関係は否定的と考えられています。

万一、HPVワクチン接種後に「多様な症状」が認められた場合、これまでに日本医師会・日本医学会より診療の手引きが発刊され、また各都道府県に診療に係る協力医療機関が整備されており、安心して接種できる体制は整えられています。

最後に

日本においては、子宮頸がんの罹患率が20~40歳代の若年女性を中心に急増し、死亡率も上昇していることが判明しています。子宮頸がん検診によるCINの段階での早期発見・治療は重要で、そのためには検診受診が強く望まれますが、CINの治療として子宮頸部円錐切除術(子宮頸部の部分的な切除)を受けた場合には、その後の妊娠において早産が起こりやすいことが知られています。HPVワクチン接種により、CINや子宮頸がんになるリスク自体を減らしておくことが大切です。

海外ではすでにHPVワクチンと子宮頸がん検診による子宮頸がんの排除(elimination)が期待されています。世界保健機関(WHO)は日本を名指して、弱い根拠に基づくHPVワクチンの積極的勧奨差し控えの政策判断が、将来、本来予防できたはずの子宮頸がんが増加するという真の被害を生み出すことになるという趣旨の声明を発表しています。

厚生労働省による積極的勧奨は差し控えられたままですが、子宮頸がんの実情やHPVワクチンの有効性・安全性をしっかりご理解いただき、正しい予防行動をぜひお取りいただきたいと思います。ご質問などがございましたら、ぜひお近くの婦人科腫瘍専門医にご相談下さい。

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